コラム各地からの「もの」便り
vol.3
『スイッチ』
ここには電力会社から請求書が来ないスイッチがある。
雷鳴が轟く夕刻に浮かび上がった、鉛の線で描かれたスイッチ。
街の中心地の、むかし病院だった建物に飛び込んで数年が経った。そしてこの再生空間が発する”芳しい香り”に誘われて、趣味や年代を超えて人々は集った。今では、南船北馬の途に立ち寄る国内外のアーティストまでが。「この建物の中にいると、なぜだかほっとする。」そう感じる人は少なくないだろう。
しかし、これがどこから来るものなのか、更に目配り心配りをする人は、やがて建物と”目”が合う。削り取られても色を塗り変えられても、黙って身を投げ出してくれた建物が、その人だけに、にっこりと微笑む瞬間だ。そして人々は、自らが次のクウカンに移動するつながりを見るのである。
彼らはやがて街を照らす光と成り、空間実験室にあかりが灯る。
- 石場貴子
- 「空間実験室2006」より事務局担当。家でもない、職場でもない、学校でもない空間実験室で作業するスタッフの姿を見つめ続けて学んだこと。アートは生き方そのもの。今年も、年に一度の「ねぶた祭」にも出かけず、現場で作業に没頭です。